医療過誤とは

医療過誤と医療事故の違いについて

 

まず、「医療過誤」とは、人為的ミスに起因し、医療従事者が注意を払い対策を講じていれば防げるケースを医療過誤と言います。医師の診療ミス、診断ミス、手術ミス、看護師その他医療スタッフとの連携ミスなどがそうです。
ニュースなどのマスコミ報道などでは、医療過誤、医療ミスなどを一括りに「医療事故」と定義し報道されることが多いようです。
これに対し「医療事故」とは、リスクマネージメントマニュアル作成指針の定義によれば、医療過誤だけでなく、医療関連の事故ながら「医療行為とは直接関係しない場合」や、患者ではなく「医療従事者に被害が生じた場合」もこれに含まれます。
(混乱を招く恐れがありますので、医療過誤・医療事故・医療ミスを、当サイトでは一括りに「医療事故」として各カテゴリーでは説明させて頂きます。)

 

医師や看護師も人間である以上、診断ミスや治療上の過誤をすることが全くないとは言いきれません。複数の医療従事者による医療チームであっても、運営や連携が上手くいかずに重大な結果を招いてしまう場合もあります。
それらが医療機関側の過失に基づく場合は、医療機関側は、債務不履行(診療契約上の注意義務違反)または、不法行為による損害賠償責任を負うことになります。
しかし、死亡や重い後遺症などの重大な結果が生じた場合、これが医療機関側の過失によるものであるかどうかということは、判断が非常に難しい問題でもあります。
仮に、病院側に過失の疑いが濃厚であっても、病院側が素直に過失を認めることは非常に少なく、被害者が病院側に賠償を求めるには、訴訟をするしかないのが医療過誤の現状です。

 

医療過誤訴訟における過失の判断基準

 

一般的に医師の過失の有無は、「診療当時の臨床医学の実践における医療水準」に照らして判断される(最高裁判決昭和57年7月20日、最高裁判決昭和61年5月30日など)。とあります。つまり、過失の有無は、訴訟が行われている時点ではなく、あくまで当該医療行為が行われた時点での医療の水準に照らして判断されます。その水準というのは、「学問としての医学水準」ではなく、「臨床における医療水準」のことです。

 

そして、具体的にどの程度の医療水準が医療機関に求められるかは、「当該医療機関の性格、その所在する地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべき」(最高裁判決平成7年6月9日)であるとされています。よって、大学病院のような高度先端医療機関と、医師1人のみの診療所とでは、求められる医療水準は異なります。

 

また、「医師が患者に対してどの程度の説明をすべきか?」という、いわゆる説明義務違反の問題についても、裁判所の判断が医療実務に大きな影響を与えているといわれており、近年インフォームド・コンセントが 広く行われるようになった背景には、説明義務に関する裁判所の厳しい判断もあるとされています。
ただ、その一方で、単に訴訟対策のために治療に伴うリスクを 形式的に説明する、選択可能な治療方法が複数ある場合に、医師としてどれが最も適切と考えるかの判断を示さず、全面的に患者の選択に委ねてしまうなど、患者と医師との関係として、必ずしも望ましくない現象の発生を懸念する声もあるようです。

 

医療過誤の種類について

 

医療過誤・医療事故・医療ミスなどの疑いがあるものは大きくわけて、@手術によるミス、A薬物投与のミス、Bその他病院内でおこるミス、の3つが挙げられます。

 

@ 手術によるミス
手術による医療ミスでは、執刀医のミスや、手術スタッフとの連携ミス、病理の診断ミス、麻酔医の投与ミスなど、様々な状況でミスがおこる可能性があります。死亡に至らない場合であっても、手術後に合併症や後遺症などを引き起こす場合もあります。

 

A 薬物投与のミス
薬物投与のミスでは、分量のミス、濃度のミス、投与頻度のミス、投与薬物自体を間違えたミスなど、医師や看護士などの判断ミスなどにより、患者に悪影響を与えた疑いがある薬物投与の場合がこれにあたります。
そして粉末、錠剤、カプセルなどの薬の他、点滴や注射などの投与のさいに、薬物や分量を間違え事故になる場合もあります。

 

B その他の病院内でおこるミス
その他病院内でおこるミスとしては、診断・診療のミス、術後の経過観察を怠った注意義務違反、術前・術後前の対応のミスなどがあります。また、医師が説明義務を怠ったために起こったミス(治療行為の目的や内容を伝える義務を怠った、手術の場合はその内容・危険性・他に選択可能な治療方法・メリット・デメリット・術後の状態についての説明を怠った場合など)も病院内で起こる医療ミスだと言えます。

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