こちらは当医療事業部所属の弁護士が独自の分析も交えわかりやすく解説した医療裁判の判例集です

医療過誤裁判の判例集(旧判例集)

医療過誤裁判の判例集(旧判例集)記事一覧

弁護士・医学博士 金ア 浩之(1)はじめに医療過誤、医療事故、医療ミスなどによる医療裁判において、医師(専門家)による見解が証拠資料として提供されるものに、裁判所が選任した鑑定人による鑑定書と、当事者が依頼した協力医による意見書があります。後者は、鑑定人により作成されたものではないので、厳密には鑑定書ではないのですが、専門家による意見という性質から、実質的には鑑定書に相当するという考え方もあって、...

弁護士・医学博士 金ア 浩之(1)過失の要件事実について医療過誤、医療事故、医療ミスなどの医療訴訟では、原告が医師等の過失を主張・立証する責任を負っているが、過失の存在は法的評価であり要件事実(主要事実)ではないから、過失を主張・立証する者は、これを基礎づける評価根拠事実の存在を主張・立証しなければならない。要件事実は、通常は、その成立要件が法定されているから、ある請求権について、何が要件事実であ...

弁護士・医学博士 金ア 浩之(1)医療訴訟に内在する立証の困難性医療過誤、医療事故、医療ミスなどによる医療訴訟において、医師の過失・因果関係を立証することが困難を極めることは、実務家の間ではほぼ共通認識といってよい。証明の困難性について、一般的には、次のようなことが指摘されている。@ 証拠の偏在:因果関係を確定するために重要な資料となる医学的情報が被告である医療側に偏在している。A 患者側の専門知...

弁護士・医学博士 金ア 浩之(1)大学病院は本当に安全か大学病院というと、高度先進医療を実践し、病院の規模から考えても日本で最高水準の医療を受けられるというのが一般的な認識だと思います。これ自体は間違いではないのですが、意外と看過されてしまう盲点があります。もちろん、大学病院で提供される医療水準のレベルは高く、その点では安心してよいのですが、稀に信じがたい医療ミスが起こります。しかも、それは大学病...

弁護士・医学博士 金ア 浩之(1)チーム医療における信頼の原則複数の医師、看護師等の医療従事者がチームとなって診療行為に当たる場合において、信頼の原則は適用されるのかが訴訟で争点となることがあります。チーム医療における信頼の原則とは、チーム医療に参加している各医療従事者は、他の医療従事者が適切な診療行為を行っていることを信頼し、その信頼を前提として自らが担当した診療行為において注意義務を尽くせば足...

この医療過誤事件は、看護師がヘパリンナトリウム生理食塩液を点滴しなければならないところを、間違えて消毒液を点滴してしまった、という事件です。患者さんは、その後、2時間足らずで死亡しました。医師法21条には、「医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」と定めてあります。そして、同条に違反すると、50万円以下の罰金刑に処せ...

医療過誤、医療事故、医療ミスなどの医療裁判では、医師の過失が認められても、その過失と結果(例えば、患者の死亡とか後遺症など)との間に因果関係が認められなければなりません。言い換えれば、医師に過失がなければ(=医師が適切な処置をしていれば)、結果(患者の死亡、後遺症など)は発生しなかった、と言えなければなりません。しかし、医師が適切な処置をしていれば悪い結果が発生しなかったかどうかは、医療の世界では...

軽井沢病院事件判決−交通事故よりも高額の慰謝料この医療過誤事件は、当時32歳の女性が第二子を帝王切開によって出産したところ、腹腔内出血により死亡したというもので、裁判所は、医師が患者の腹腔内出血の発見と治療の遅れを過失と認定して、医師に賠償を命じた判例です(東京地裁平成18年7月26日判決)。手術は、平成15年10月4日に行われました。帝王切開手術自体は上手くいき、胎児も無事に娩出され、手術は18...

この医療過誤事件の患者は自動車運転中に交通事故に遭い、奈良県立五條病院に救急搬送されました。その時には、脳神経外科部長と小児科医が当直していました。脳神経外科部長の診察したところ、胸部の聴診や腹部の視診などでは問題がなかったそうです。採血、頭部CT、胸部・腹部の単純X線などでも異常はなかったようで、一応経過観察ということになったそうです。ところがその日の夜7時頃容態が急変し、先ほどの脳神経外科部長...

この医療過誤事件は、耳鼻喉頭科で滑膜肉腫と診断された当時16歳の女性に対し、術後化学療法(VAC療法)が実施されたところ、過剰投与により患者を死亡させた事件で、刑事事件になっています。この医療過誤事件では、VAC療法を実施した担当医のみならず、指導医と科長(教授)も有罪とされました(さいたま地裁平成15年3月20日判決)。一審判決で下された刑の内容は、・担当医:禁錮2年、執行猶予3年・指導医:罰金...

禁忌に関する興味深い判例を2つご紹介します。ひとつは、平成8年1月23日の医療過誤裁判の最高裁判例で、禁忌とされている薬剤が投与された場合の裁判所の基本的な考え方(原則論といってよいかもしれません)を示した判例です。最高裁は、禁忌薬剤の投与と医師の過失の関係について、「医師が医療慣行に従った治療を行ったからといって、医療水準に従った注意義務を尽くしたとは直ちに言えない」としたうえで、添付文書の注意...

この医療過誤事件は、患者に対して何か具体的な損害が発生したわけではないのに、「5年生存率」が低下したこと自体で慰謝料を認めたという点で、とてもユニークな事例です(東京地裁平成18年4月26日判決)。よくある健康診断での肺癌の見落としなんですが、見落としてしまった最初の胸部X線写真では、ステージTでしたが、癌が見つかった胸部CTでは、すでに最初の健康診断から11ヶ月が経過しており、ステージUbに進行...

これはMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の症例です。黄色ブドウ球菌は、ヒトの体に棲みついている常在菌ですので、外科の分野ではよく術後感染症で問題となるのですが、医療裁判では感染ルートの特定が困難で患者側の勝訴が難しい症例であることは以前にブログで書いたとおりです。今回紹介する判例は、MRSAの医療過誤事件で数少ない原告(患者側)勝訴の判例なんですが、興味深いのは、裁判所が「因果関係なし」と明...

専門性が高い医療裁判では、原告(患者側)と被告(医師・医療機関側)との間で、お互いの意見書を戦わせる意見書バトルになることが珍しくありません。意見書とは、当該医療事故に関する高度な専門的知見を有する医師が当該医療事故について意見を述べたもので、私的鑑定書とも呼ばれています。なぜ私的鑑定書なのかというと、裁判所が鑑定人として選任した中立的な医師により作成された正式な鑑定書と異なり、原告と被告がそれぞ...

医師の医療行為に注意義務違反が認められたとしても、死亡等の生じた結果について責任を負わせるには、因果関係の立証がなされなければなりません。因果関係の立証には、医療行為が作為か不作為かを問わず、その医療行為が結果を招来させた関係を認めうる「高度の蓋然性」の証明が必要とされます(最判平成11・2・25)。しかし、特に不作為の場合、「○○という適切な治療が行われていれば」という仮定の話になるため、その立...

前回、医師が適切な医療行為を行わず患者が死亡したが、その不作為と死亡との因果関係が立証できなかった場合の医師の責任について取り上げました。医師の注意義務違反が不作為の場合の因果関係は、適切な医療行為がなされていれば患者がなお生存していたかという仮定の話になるため、その立証は困難なものとなります。それでは、不作為の場合に因果関係が認められるのはどのような場合でしょうか。作為の事例における因果関係につ...

東京高裁平成10年2月26日判決。 この判例の重要な争点は、以下の3点に整理できます。・第1は、職場の定期健康診断において読影担当医師に課される注意義務の程度です。・第2は、定期健康診断の読影担当医師に課される医療水準です。 ・第3は、従業員に対する定期健康診断の際に求められる企業の安全配慮義務の程度です。第1の争点について裁判所は、「定期健康診断は、一定の病気の発見を目的とする検診や何らかの疾患...

医療機関に求められる医療水準は、先進的研究機関を有する大学病院や専門病院、地域の根幹となる総合病院、その他の総合病院、小規模病院、一般開業医の診療所の順で上下します。とはいえ、例 えば開業医が「開業医に求められる医療水準を超えた治療であった」などと言った場合に責任を逃れられるのでしょうか。この点については、「医療水準論」の 回に若干触れましたが、そのような場合、つまり医師が対処しうる知見や技術・設...

1 消滅時効とは消滅時効とは,権利者が一定期間権利を行使しない場合に請求権が消滅する法律上の制度をいいます。医療過誤を原因とする損害賠償請求権も消滅時効により消滅する可能性がありますので注意が必要です。次に詳しく述べますが,医療過誤を原因とする損害賠償請求を行う場合の法律上の根拠としては不法行為責任(民法709条),債務不履行責任(民法415条)を根拠としますが,不法行為責任を根拠とする場合には3...

1,投薬と注意義務の基準投薬は,疾病の治療目的等のため医師等が患者に薬剤を投与する行為をいいます。使用される薬剤は,薬剤の種類,投薬の時期,投薬量,投薬方法が適切であれば疾病の治癒が促進されるなどの利点がありますが,他方で,薬剤は本来的には人体にとっては異物であり投薬すべき薬剤の種類,投薬時期,投薬量,投薬方法などが適切でなければ人体に有害な影響を与える危険性があります。もっとも,適切に投薬が行わ...

(1)内視鏡とは何か。内視鏡とは、先端部分にレンズを内蔵した管で、外からは観察できない人体の内部を観察するために開発された医療器具である。1868年のクスマウルの「硬性胃鏡」が原型である。現在では、人体内部を見るだけでなく、組織の摘出や病変部の切除や止血などの治療行為を行うこともできる高度な技術が集約された高性能な医療器具となっている。一般に、内視鏡による手術の方がメスを入れる手術より肉体的な負担...

病院内では患者が新たに感染症に罹る危険が高いこともあり、医療機関にはその防止が求められます。今回は、MRSAの院内感染により化膿性髄膜炎を発症し、結果死亡するに至った医療過誤の事案で、感染について医療機関の過失を認めた裁判例をご紹介します。MRSAは、黄色ブドウ球菌の一種で、メチシリンという抗生物質に耐性を持つ多剤耐性菌です。このMRSAは院内感染の主要菌とされています。なお、本判例では脳腫瘍(髄...

1 過失(第3回診察時)・第3回目診察時の超音波検査画像によれば,本件患者の左乳房外側中央部の乳腺嚢胞の数は少なくとも五,六個であり,同年4月4日の超音波検査画像と比較しても,増加している上,嚢胞の分布状況についても,第2回診察時の画像では数個の嚢胞が散在しているにとどまっていたが,第3回診察時の画像では,1か所ないし複数部位にわたって集中している(図面上,赤線で囲まれている各嚢胞が第2回診察時の...

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