第8回 / 大腸癌の発生機序

1 発生機序に関する学説

 

大腸癌の発生機序について、学説は2つに分かれているようです。

 

ひとつは、大腸の正常組織がいきなり癌化するのではなくて、まず腺腫(これ自体は癌ではないそうです)を形成し、この腺腫が発生母地となって大腸癌が発生するという見解があります。
adenoma-carcinoma sequence説と呼ぶそうなんですが、長いので便宜上A説としておきましょう。
この腺腫でみなさんにも馴染みがあるのは、いわゆるポリープです。隆起型腺腫というのですが、ポリープだけが腺腫ではなく、平坦型腺腫もあるそうです。

 

もうひとつは、腺腫を介さずに、正常な大腸粘膜から直接癌が発生するという見解です。これは、de-novo発がん説と呼ぶそうですが、面倒なのでこれもB説としておきます。
この説は、大腸癌以外の癌、例えば肺癌とか胃癌とかでは、一般的な見解になっているそうです。つまり、肺癌や胃癌などは、正常組織(上皮細胞)が直接癌化すると考えられているわけです。

 

さて、大腸癌に癌しては、B説よりもA説のほうが支持されており、大腸癌ではA説の方が多数説のようです。 

 

A説による腺腫を介しての癌化は、今日の遺伝子の研究でかなり解明されているそうです。先の隆起型(ポリープ型)の場合、癌抑制遺伝子であるAPC遺伝子の異常によってまず腺腫が形成され、それから癌遺伝子であるK−ras遺伝子がそれを癌化させるというメカニズムで大腸癌になることが分かっています。
平坦型腺腫の場合も同様に、APC遺伝子の異常で腺腫が形成されるのですが、発がんに対してK−ras遺伝子の関与はないそうです。

 

2 遺伝性大腸癌

 

大腸癌の中には、数はそれほど多くはないそうなんですが、「家族性大腸ポリポ−シス」という遺伝性の大腸癌があって、大腸に100個以上もの腺腫(ポリープ)が多発する特殊な疾患で、1/2の確率で子供に遺伝すると言われています。

 

しかも、この疾患は、ポリープに対して何らの処置もとらずに放置すると100%近い高確率で癌化するとさえ言われています。

 

ただし、この病気の原因となる遺伝子についてはまだ十分に解明されていないのが現状です。

 

 

 

(参考文献)
山田一隆編著「大腸癌の予防と最新治療Q&A」医歯薬出版株式会社

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