胃癌疑いの病変をおよそ7年間放置されて患者が死亡したことに対し、訴訟上の和解で損害賠償金4000万円が支払われた事例

事案の概要

 

患者さんはかかりつけの診療所で、上部消化管内視鏡検査を受けました。この検査中に胃体部後壁から採取された生検検体について、外部の病理医は、癌か非癌か判断しかねるとして、消炎治療後の再検査を求めました。しかし、このような報告を書面にて受けたにもかかわらず、主治医はその後およそ7年間にわたって一度も再検を行わず、患者は同部位の胃癌により死亡したという事案です。
胃癌を見落とされたことで死亡した患者の無念を晴らし、主治医の責任を問いたいと思った患者の遺族からご相談いただき、主治医を相手方にして争うことになりました。

 

弁護士の方針・対応

 

まずは訴訟によらず交渉での解決を試みるものの、相手方のこれまでの態度から、自身に責任はないと回答される見込みが濃厚であるため、無責回答があり次第、訴訟を提起するという方針をとることにしました。
結果的に訴訟を起こす流れとなり、相手方には、再度の上部消化管内視鏡検査および生体組織検査を遅くとも初回検査から2ヶ月経った頃に実施すべき注意義務と、その後も少なくとも年に一度の頻度で同様の検査を実施すべき注意義務があったと主張しました。
そして、いずれかの義務が履行されていれば、検査から遅滞なく胃癌と診断されて適切な治療を受けられ、胃癌による死亡を回避できたとして、不法行為または診療契約の債務不履行に基づき、損害賠償を求めました。
訴訟では、注意義務違反、因果関係(特に、当初の病変と、死に至らしめた病変の同一性の有無)、損害額が争点となりました。

 

結果

 

相手方は、なかなか自身の非を認めずにいましたが、提訴してから約1年11ヶ月を経て、相手方が損害賠償金4000万円を支払うという内容で訴訟上の和解が成立しました。
訴訟の終盤に相手方が提出した医学意見書に対し、適切に反論して弾劾したことや、第11回弁論準備手続期日でなされた裁判所の心証開示から状況を的確に読み、次の期日において、注意義務違反の態様や因果関係について、理由を明示しながら丁寧に弁論していったことが、高額な損害賠償金の獲得に繋がったと考えられます。

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