褥瘡(じょくそう)患者の方が老人ホームに入所した後、敗血症を発症し、これが原因で死亡したことについて、詳細を知りたい、そして責任の所在を明らかにしたいと望んだ患者の遺族からご相談いただいた事案です。この事案では、老人ホーム、同ホームに配置されていた担当医、担当医の使用者である法人を相手方として、損害賠償を請求しました。
証拠保全によって手に入れた医療記録からすると、相手方に有責性があると判断できました。
損害賠償を請求する理由について、相手方にはそれぞれ患者の褥瘡を管理すべき注意義務があり、各人が負う注意義務のいずれかが履行されていれば、患者が死亡することは回避できた旨を主張し、訴状を提出しました。
訴訟では、過失、因果関係、損害が争点となりましたが、褥瘡拡大・悪化の所見等、観察所見を看護記録に残していなかったこと等を指摘し、老人ホーム側に注意義務(観察義務)違反はあると反論していきました。
相手方が主張する言い分に対し、書面で一つ一つ丁寧に対処していったことで、尋問も鑑定も要さずに解決に至りました。結果的に、8回にわたる口頭弁論期日を重ね、提訴してから約1年4ヶ月を経て、損害賠償金850万円を支払ってもらうという内容で、訴訟上の和解が成立しました。また、和解調書には、患者が死亡したことについて、相手方が心より遺憾の意を表する旨も記載されました。