患者さん(80代・女性)は、前日夜から腹痛があり症状が改善しないので、午前4時頃救急要請し、相手方病院に搬送されました。
相手方病院では、触診・CT・尿検査を行ったものの、血液検査は行わないまま、異常なしという診断で、患者さんを帰宅させました。ところが、翌朝、患者さんは死亡した状態で発見されました。
なお、本件では行政解剖が行われ、死因は化膿性腹膜炎でした。
本件事案の特徴として、@行政解剖がなされA死亡前日の診断で腹部CTが撮影されていました。そこで、@解剖医の意見を聴取することで、死因の詳細、前日の患者の状態を把握し、ACTを確認することにより、虫垂炎の所見が確認できるかを調査する方針としました。
なお、相談時点では、@そもそも、CT上虫垂炎を疑う所見があるのか、A仮に前日のCT所見で虫垂炎の所見が確認できたとして、その時点で腹膜炎であった場合、早期に治療をしたとしても因果関係が否定される可能性もあると判断していました。
調査の内容としては、本件を担当した解剖医と第三者の消化器内科の医師の意見を面談で聴取しました。
調査の結果、解剖医から解剖時点で強い炎症所見があること、診察時点で血液検査をしていれば炎症所見が確認できたはずであること、消化器内科医から、CT画像上、虫垂の腫大、壁の肥厚、複数の虫垂結石が確認でき、他方で、明らかな穿孔所見等腹膜炎を確認できる所見はありませんでした。
そこで、調査の結果を踏まえ、CT撮影をし、画像を確認した時点で@虫垂炎と診断し虫垂切除術を行う注意義務違反等の過失があり、注意義務違反がなければ患者の虫垂炎が進展し、化膿性腹膜炎が原因となって死亡することはなかったと判断し、交渉をする方針としました。
診断時のCT所見という客観的証拠もあったことから、相手方病院の代理人弁護士は、交渉の当初から有責であることを前提に交渉が進み、最終的には2700万円で解決しました。
この事案では、相手方病院の有責につながる解剖医の意見が得られたこと、さらにCT画像についても相手方有責につながる協力医の意見が得られたことから、示談交渉を有利に進めることができました。その結果、患者さんの死亡から1年足らずで、2700万円の示談が成立しました。
診断時のCTの存在、解剖していたこと、解剖した医師の意見を聴取できたこと、CT所見につき消化器内科の意見聴取をしたこと等十分な調査をした結果、過失、死亡との因果関係があることを前提として、2700万円の示談が成立しました。
また、死亡から1年以内の解決と当職らが扱う事件の中でも異例の速さでの解決でした。